今回大河ドラマ「龍馬伝」を制作するにあたって、肝に銘じているのは「わかったような気にならないこと」です。「黒船じゃあ!!」の一発で海外列強の脅威と日本側の動揺を表現するのが常ですが、黒船を見た当時の人々の気分は、本当のところどうだったのでしょうか?弁当を持った多くの小舟が物見遊山にこぎ出していったという史実も残っているくらいです。そっちの方がなんだか納得できるし、面白い。リアルな歴史の姿、生き生きとした人間像に限りない興味を覚え、想像力をかきたてられます。
龍馬の描かれ方にしても、「ワシはフリーじゃ」「世界は広いぜよ」的な、ともすると早々と出来上がってしまった人物の感がありました。そんなはずはない、龍馬は最初から坂本龍馬だったのではなく、三十三年の生涯の中で、日々悩み、迷いながら、進化していったのだろうと思うのです。
今回は特に、岩崎弥太郎の視点で龍馬という人物の成長物語を描いていきます。既存のイメージにとらわれずに、素直な気持ちで、新しい龍馬の伝説づくりに取り組みたいと思います。
脚本、ヒーローものを書かせたら、この人!!「ガリレオ」「CHANGE」「HERO」などを手がけ、大ヒット連発の福田靖さんが龍馬伝の脚本を執筆します。「ガリレオ」で福山雅治さんを魅力的な天才物理学者として描いた福田さんが、今度は龍馬となった福山さんをどんなふうに描くのか、われわれも楽しみです!!
演出、「龍馬伝」のチーフ演出を担当するのは大友啓史。NHKで今、最も勢いのある演出ディレクターの一人です。徹底的にリアルで濃密な人物描写―。そして奥行きや広がりを感じさせる美しい映像―。あらかじめカット割りすることなく、複数台のカメラを様々な角度から回し、自在の編集で組み上げていくという手法で、その世界観を描き出していきます。「土曜ドラマ ハゲタカ」では第33回放送文化基金賞テレビドラマ部門「本賞」、第59回イタリア賞シリーズドラマ部門などの数々の賞を受賞。今年放送された「スペシャルドラマ白洲次郎」では、脚本と演出を兼ね、高い評価を得ました。
龍馬伝の出演者・スタッフの顔合わせの席では、「いい映像が撮れるまでとことん粘ります!!」と宣言し、龍馬伝を最高の作品にする意気込みを見せていました。